独り言

人情紙風船

人情紙風船

院長のひとりごと173

スタッフの親が病気で入院しました。
かなり高齢で病状が悪化したため、そのスタッフは急遽仕事を休み、病院に駆けつけようと、その日に休みを取る予定のスタッフに休みを代わってくれないかと頼んだそうです。
ところが、どのスタッフも外せない用事があると言って、代わってくれなかったとのことでした。
親の死に目に会えないかもしれないという事態に勝る「外せない用事」、とは一体何なのか問いただしたいところですが、「個人情報」を重視する今のご時世では、うかつに問い詰めれば「パワハラ」になるのでしょう。

院長の立場でのコメントを求められれば「休みは個々のスタッフの権利であり自発的に返上しない限りその権利を犯すことはできない。」
と言うことになります。
本音を言えば「なんとも世知辛い世の中になったものだ。
人情紙風船とはこのことか。」
とぼやきたくなります。
「個人の権利保護、個人情報保護、ハラスメント撲滅」
これらはいずれも人々がみんな平等に、平和に幸せに暮らせるための方策であるはずです。
昔からあった「困ったときはお互い様。情けは人のためならず。」
という言葉にあるような生き方は今の時代には不要なのでしょうか。
人が幸せに生きていくためには邪魔になるモノなのでしょうか。
古いと悪い、新しいと良いは果たして同義語なのでしょうか。
モラルというか価値観というか人にとって本質的なものは普遍的なものであると私は思っているのですが。

ただ、このスタッフに対して「いつでも休みを代わる。」
と言ってくれた若いスタッフがいたそうです。
そう聞いて少し心が癒やされました。
私の世代やもっと上の世代の人でも、必ずしも私たちと同じ価値観ではなかったですから、価値観の変化を時代のせいにするのはどうかと思います。
一つだけ感じることは、権利を主張する人に義務に関する責任感が希薄なことがしばしばあるということです。
「責任感、義務感、忍耐力」
といった言葉を、私はこれからも大切にしていきたいと思うし、クリニックを支えるものだと思っています。