MRさん。その2
私は元々そんなに出来た人間ではないし、短気だし、愛想のいい方でもありません。
医者になって一番良かったと思うことは、殆ど人に頭を下げる必要がないことだと思っているような人間です。
大学病院に勤務している時も、出世したいと思わなければ、実に居心地のいいところだと感じていました。
常に本音で、しかも正論をまくしたて、相手が教授であろうと平気で食ってかかっていました。
私の指導教授は、おそらくあちこちでよその教授に謝っておられたことでしょう。
出世欲も金銭欲もさしてなく、首にしたければいつでもどうぞと言いたい放題の私は、廊下でよその講座の、見知らぬ先生から挨拶されたりしました。
関わってはいけない人間ナンバーワンだったのでしょう。
医局でMRが声をかけてきても返事をしたことがありませんでした。
アポを取らずに医局に来て私に声をかけるということは、誰でも良いということであり、ならば私でなくて良いということであり、それなら相手をしなくて良いと考えていました。
私が今のクリニックでMRと談笑していると聞いて、信じられないと大学のMRは皆驚いたそうです。
私にも状況判断くらいは出来るのです。
しかし、昨年末にやってきて、新製品を紹介するや、サンプルも提供せず採用をせがみ、今日が年内に自分が来られる最後の日だからと即断を求めた初対面のMRに対して、今のクリニックに来て初めて「あんたのような行儀の悪いMRは二度と来るな。」と声を荒げてパンフレットを投げつけました。
このクリニックに来て4年、努めてにこやかに応対してきたのに、三つ子の魂百までもとはよく言ったもの。
眠っていたものが一気に目覚めた瞬間でした。
そのMRは二度と来ることはなく、そのMRを紹介した薬問屋の担当者(MSと呼びます)も担当替えとなりました。
この地においても、関わってはいけない人間ナンバーワンの地位を不動のものにしていく実感が、ひしひしとしている今日この頃です。