介護と医療 「サービスの矛盾点」
院長のひとりごと93
新宮市では、介護関係者と医療関係者が相互に問題点を討論する、ワークショップが持たれています。
プロジェクトは和歌山県が企画したもので、新宮市にある保健事務所が主催して行われています。
特に認知症の方の介護や、独居老人の介護などが話題の中心になっています。
私も3回会合に参加しました。
私たちのクリニックは、維持透析患者さんが主であるため、特に介護サービスの介入を必要としています。
新宮近辺には療養目的の、入院によって維持透析を受けられる様な病院がないため、介護サービスに頼ることが多々あります。
一番矛盾を感じるのは、生活保護を受けている人の方が、所得のある人より質の高い介護サービスを受けられることです。
生活保護の方を批判しているわけではありません。
私たちの患者さんで、介護サービスを受けての透析がもっとも望ましい方がおられました。
以前、全く同じような例の患者さんを経験して、その時介護サービスを受けることでうまくいきました。
今回も介護度も同じだったので、同じプランを介護関係者に提案したのですが、費用の点で難しいと言われました。
生活保護の方の場合は費用が発生しないのですが、今回のケースでは息子さんが生業に就いておられるため、所得があるのです。
しかし、費用を賄える程の所得ではないということでした。
まじめに毎日働いている息子さんが、親孝行をしようと思ったら自分の仕事を捨てて、生活保護を受けなければならないという現実を知り、私が愕然としました。
同時に行き場のない怒りを覚えました。
介護の人との会合の折、この話をしたら、同じ様に矛盾を感じておられました。
まじめに毎日働いている人が、安心して暮らせる国だと思っていましたが、どうやらそうでもないようなのです。
私たちが今現在住んでいる日本は。
こんな例は、探せばいくらでもあるのかもしれません。
私に今何が出来るか分かりませんが、現状でまじめに働いている人がちゃんと親孝行できるようにするにはどうしたらいいか。
これからも介護関係者と取り組んでいきたいと思っています。
2012年11月18日