中毒による神経障害
中毒を起こす物資としては、金属、有機溶剤、有毒ガス、薬品、農薬、食物の毒が挙げられます。
印刷工場、蓄電池工場等で使われてきた鉛による中毒では食欲不振、便秘、倦怠感が表れ、手、足の脱力、頭痛、吐き気、意識障害も見られることがあります。
含鉛ガソリンに関係する4エチル鉛中毒では手足のふるえ、ろれつが回りにくい、よたよたした歩行、意識障害、記憶力低下、幻覚、血圧低下、発汗増加等がみられます。
乾電池、蓄電池工場でみられるマンガン中毒では、パーキンソン症状がみられます。
抗パーキンソン薬が治療に使われます。
工場からの廃液による有機水銀中毒は水俣病として有名ですが、末梢神経から中枢神経に至るまで広範な障害を起こします。
手足の運動障害、ろれつが回らない、視野が狭まる等が特に特徴的な症状です。
砒素による中毒はまだ記憶に新しいことですが、急性中毒症状としては下痢、腹痛、嘔吐、さらに重症ではショック、意識障害、けいれんをきたし死に至ることがあります。
急性期を脱しても手足の感覚障害、脱力、皮膚の色素沈着をきたします。
有機溶剤のメチルアルコール中毒では視力障害をきたします。重症ではけいれん、意識障害をきたします。
接着剤に使われるn-ヘキサン中毒では手足の感覚障害や脱力を起こします。
有毒ガスである一酸化炭素による中毒では血液中で酸素を運ぶ働きをするヘモグロビンに一酸化炭素が結合して酸素を運べなくしてしまうので全身の酸素欠乏が起こります。
顔面が紅潮し、頭痛、悪心、めまい、さらに意識障害を起こします。
重症例ではパーキンソン症状、痴呆症状等がみられます。
金属メッキに使われるシアン化合物は青酸カリの名で知られていますが、急激な呼吸抑制を起こす毒物です。
薬物としては麻薬・覚醒剤による中毒が依存を引き起こすため深刻な社会問題になっています。
農薬である有機リン剤は筋肉の働き、唾液、涙、消化管、気管等からの分泌を障害し、下痢、嘔吐、唾液、汗の分泌亢進、さらには、呼吸困難、肺水腫、けいれん、意識障害等を引き起こします。
重症では死に至ります。
毒ガスであるサリンも同様の作用があります。
食品による中毒では呼吸麻痺により死に至るボツリヌス菌の毒素とふぐ毒であるテトロドトキシンが有名です。
中毒は治療が困難な場合も多く発生予防に努めることが最も重要です。