脳神経麻痺
脳神経は全部で12ある神経で嗅覚、視覚、聴覚、顔面の感覚、顔面筋の運動、物を飲み込む、舌を動かす、首の筋肉の運動等の働きを司っています。
これらの神経は脳幹という、大脳と脊髄をつないでいる脳の細い部分に集中しています。
そのため脳幹は、小さな脳梗塞を起こしても複数の脳神経の麻痺を起こし重篤な障害の原因となります。
単一の脳神経の麻痺は脳梗塞以外の原因でも起こります。
比較的多いのは顔面神経麻痺です。
顔面神経は顔の筋肉を動かす神経なので、これが麻痺すると、瞼が閉じられない、口が閉じられない等の障害が起こります。
通常は片側の麻痺が多いです。
原因としては脳梗塞によるものもありますが、冷たい風に長時間当たっていたことによるものが少なくありません。
夏の冷房、車の窓を開けていたこと等が原因となります。
大半が自然治癒します。
回復を早めるためにビタミン製剤の内服や顔面のマッサージを行います。
最近増加している原因としては糖尿病があります。糖尿病は動脈硬化を進めるため神経を養っている血管が細くなり神経への血流が低下して神経障害を起こします。
顔面神経以外では眼球を動かす神経の一つである動眼神経の麻痺が見られます。
動眼神経麻痺では眼球がうまく動かなくなるためにものがだぶって見える様になります。
また、瞼が開けにくくなり垂れ下がってきたりします。
糖尿病によるものは経過が良好な場合が多くこれも自然治癒が期待できます。
勿論糖尿病の治療をきちんと行わないと症状の再発や悪化の可能性があります。
前にも書きましたが、脳神経の一つである聴覚神経の腫瘍により難聴、めまい等が起こり、近くを通っている顔面神経を圧迫すると顔面神経麻痺を併発することもあります。
脳神経の多くは末梢神経に分類されるもので比較的再生能力が高く機能の回復が望めることが多いのですが、脳腫瘍、脳梗塞、変性疾患といったものが原因ですと必ずしも十分な回復が望めません。
とくに、物を飲み込む運動が障害される場合は、誤嚥による窒息、肺炎の危険があります。
早めに専門医の診察を受け、必要な検査をすることが大切だといえます。
最近は神経の再生を促す薬品の研究が急速に進んでいます。
この様な薬品が最も有効な部位の一つが末梢神経だといえます。
そういう意味から近い将来特効薬が開発されることが期待されます。