病気のこと

重症筋無力症

重症筋無力症

手足の筋肉のような、横紋筋と呼ばれる筋肉は、神経から分泌されるアセチルコリンという物質の刺激により収縮します。
筋肉には、アセチルコリンの刺激を感知する受容体という場所があり、ここにアセチルコリンがくっつくと筋肉は収縮します。
この受容体の働きが悪くなり、アセチルコリンの刺激が伝わりにくくなる病気が重症筋無力症です。

症状としては筋肉の脱力です。
繰り返し使うことによって脱力が増強します。
そのため、症状は夕方に強くなります。
また、休息することにより症状は軽くなります。
症状の強く出るところとしては、瞼の筋肉があります。
そのため夕方になると瞼が垂れ下がってきてものが見えにくくなります。
このため、患者さんは視野を確保しようとして顎を上げる様になります。

瞼以外では、顔の筋肉、ものを飲み込むための筋肉等が傷害され顔の表情が乏しくなったり、言葉を話したり、ものを飲み込むのが困難になったりします。
手足の筋肉が傷害されることもあります。
比較的若い人に発症し、女性に多い傾向があります。

過労、風邪、妊娠等がきっかけになることが多いです。
筋電図、血液検査等で診断は比較的容易につきます。
治療として、アセチルコリンの働きを強くする薬を用いることで症状が軽快します。

この病気は免疫異常により、アセチルコリンの受容体の働きを悪くする物質(自己抗体)が体の中で産生されることが原因と考えられています。
この為、免疫異常を改善する目的で副腎皮質ステロイド剤が用いられ効果を上げています。

さらに、自己抗体の産生に関わっている胸腺という組織を手術により除去することで改善する場合もあります。
クリーゼと呼ばれる、呼吸困難を起こす発作が見られた場合には、速やかに人工呼吸等の処置をする必要があります。

また、この病気とよく似た病気が先天異常により起こります。
やはり筋肉の収縮を刺激するアセチルコリンの働きが傷害されています。
同様の治療により症状は改善します。

さらに、悪性腫瘍に合併して筋無力症状が出現することがあります。
特に肺癌でよく見られるます。
この場合は神経からのアセチルコリン分泌に必要なカルシウムが神経の中にうまく入れなくなってアセチルコリンの分泌が減るために脱力を起こします。

筋電図で特有の異常が認められます。
カルシウム製剤やアセチルコリンの作用増強剤により症状は軽快します。
さらに、色々な原因で血液中のカリウムの低下や増加が起こっても筋肉の脱力が起こります。