病気のこと

スローウィルス感染症

スローウィルス感染症

スローウィルス感染症という言葉は聞き慣れないと思いますが、恐牛病もそのひとつです。
感染症なのですが、感染してから発病するまでが数年~10年と極めて長く、発病後は急速に進行するのが特徴です。

スローウィルスと、感染源がウィルスの様な病名ですが、その病原体は長く不明でした。
最近プリオンと呼ばれる蛋白が同定され、スローウィルス感染症の原因因子として注目されています。

スローウィルス感染症と呼ばれる疾患としては、ヤコブ病、クルー病があげられます。
また、恐牛病とよく似た羊の病気にスクレーピーと呼ばれるものがあります。

これらの病気ではいずれも脳に、著明な萎縮・変性を起こす海綿状脳症と呼ばれる特徴的な病変を来たします。
これらの病気では脳が主な感染源となります。

クルー病はニューギニアの風土病で、この地方の食人の儀式が原因とされています。
ヤコブ病では脳以外に、角膜移植、脳の硬膜を使った手術、深部脳波電極の使用からの感染の報告があります。
これらの疾患は、いったん発症すると急速に神経障害が進行し、寝たきりとなり死亡します。
ヤコブ病では、ミオクローヌスと呼ばれるけいれん様の異常運動が出現し、脳波にも特徴的な異常が出現します。
有効な治療法はなく、発病したら致死的な疾患です。

感染したら必ず発病するかどうかは不明ですが、有効な治療法が無いだけに、感染に対する予防対策が重要となります。
ヤコブ病は、先に述べましたように、医療事故として起きる場合もあり、慎重な診療が求められています。
牛や羊といった食用とされるものからの感染に関しては、既に多くの情報がありますからここでは詳細は避けます。

非常に危険な疾患ですが、むやみやたらと流行するものではありません。
食品に関しても、正しい知識を持って、冷静に対処することが大切ではないかと思います。
今最も研究が進んでいる病気であり、いずれ治療法が開発されることと思います。