アルツハイマー病
この病名は、ほんの数年前までは専門家しか知らない病名でしたが、今や知らない人の方が少ないのではないでしょうか。
痴呆を引き起こす代表的な病気です。
この病気になると、脳の神経細胞が急激に死滅して、神経の働きが悪化していきます。
特に、高次機能とよばれる、いわば「心」に相当する神経の働きが侵されます。
大半の患者さんでは記憶障害が現れます。
昔のことは覚えてますが、物忘れが激しくなります。
さらに、人や場所や時間が分からなくなります。
筋道を立ててものを考えることが困難となり、人の話も理解できなくなります。
運動麻痺や感覚麻痺を起こすことは殆どありません。
失禁はよく見られます。
物事に無頓着無関心となり、不潔になることもよくあります。
妄想や幻覚が起こり、あちらこちらに歩き回る(徘徊)ことも見られます。
脳全体に神経細胞が減っていきますので、その症状は患者さんによりまちまちですが、進行していくことは確かです。
原因に関しては現在かなり解明が進んでいます。
脳の中に、異常なタンパク質が貯まることが主要な原因と考えられています。
遺伝子の異常によりこの様な異常蛋白の蓄積が起こる場合のあることも分かってきました。
記憶に関係するアセチルコリンという、脳内の化学物質が減少することも判明しました。
現在、脳内のアセチルコリンの減少を補う薬が臨床で使われており、初期の患者さんでは記憶障害の改善も見られています。
この分野での研究はアメリカが最も進んでいますが、日本人の活躍もめざましく、画期的な研究成果が続々と得られています。
しかし、まだまだ痴呆が治るまでには至っていません。
脳神経細胞は、新たに作られることが分かってきましたので、原因となる異常蛋白に対する治療に加え、神経細胞再生という治療も考えられています。
神経細胞は、刺激を受けることで機能が良くなりますから、患者さんを寝たきりで放置せず、話しかけたり、テレビや音楽に触れてもらったり、身体を動かしてもらうことで症状が良くなる場合があります。
本人も周囲の人も諦めないことが一番大切だといえます。