脱髄疾患
神経の周りには髄鞘(ずいしょう)とよばれる神経を取り巻く鞘の様なものがあります。
これが破壊される病気を脱髄疾患とよびます。
多発性硬化症はこの脱髄疾患の代表的な病気で中枢神経の色々な部位で脱髄を引き起こします。
その結果色々な神経症状があちこちに、そして、時間差を持って現れてきます。
日本人では、視神経と脊髄に病変を持つ例が多く見られます。
その結果、視力低下、手足の麻痺、手足、首、体幹のしびれ等で発症することが多いです。
症状は発症して1ー3日で急速に完成します。
急速な視力低下には眼痛がともなうことも見られます。
運動障害は両下肢の麻痺が多く、排尿障害の見られることもよくあります。
感覚障害に加えて痛みが走るけいれんが起きることもあります。
首を前屈させると背中に痛みが走るのが、この病気の特徴的な症状の一つとされています。
眼球が横を見る時うまく動かないという症状も見られます。
その他、顔面の感覚・運動障害、言語障害、うつ等症状は極めて多彩であり、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返します。
原因としては自己免疫異常が考えられています。
検査では脊髄液中の免疫グロブリンの増加、脳波の異常、MRIでの病変の描出等が得られ診断に役立っています。
治療薬は、自己免疫異常を和らげる副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤が中心で、痛み等の症状に対してはそれぞれの症状を和らげる薬物を併用することとなります。
この病気は症状の寛解・再発を繰り返しながらも進行することが多く、治療薬に加えてリハビリによる機能回復訓練が必要となってきます。
現在、自己免疫異常の解明が進んでおり、インターフェロン等を用いた免疫療法の開発も進んでいます。
近い将来には原因となる免疫異常に対する特効薬が開発されることも期待されます。
治療法が全くない疾患も多い神経疾患の中では、比較的希望の持てる疾患であると言えます。
ただし、治療には専門的な知識が必要です。