介護保険制度の矛盾
院長のひとりごと85
認知症の介護に関して、介護保険関連の施設や行政の人と、最近よく意見交換をしています。
介護保険制度は私個人としては、大変ありがたい制度だと感じており、何としても破綻することがないように、維持していってほしいと願っています。
それは、うちのクリニックが透析を主にするからです。
通院で長年同じ人が診療を受ける透析では、高齢、独居に加え、認知症が出現した患者さんが少なくありません。
このような患者さんが、うちのような通院のみのクリニックで透析を続けるためには、家での生活を介助してくれる人が不可欠です。
さらに老老介護の家庭も少なくありません。
患者さんの透析を継続するために、うちのクリニックでは、介護担当者と患者さん家族と、うちのスタッフによる3者面談が頻繁に行われています。
ショックだったことは、生活保護の独居の認知症患者さんが受けられた介護サービスを、奥さんと息子さんが同居している患者さんが受けられなかったときでした。
なまじ息子さんに収入があるばかりに、介護サービスを受けるにはかなりの費用の負担が必要で、その費用負担が困難だったからです。
親孝行な息子さんのつらそうな表情が忘れられません。
行政の矛盾を強く感じました。
私たちの親の世代までは、年老いた親の面倒は子供がみるのが当たり前でしたが、今は子供に代わり、介護施設が面倒をみてくれるようになってきました。
介護度によりますが、経済的な負担がそれほどかからずに、親の面倒をみてもらえる介護保険制度はありがたい限りです。
介護を受ける人にとっても、昔なら寝たきり状態で床ずれだらけになったかもしれない人が、健康的な生活を送れることも少なくないので、ありがたいのではないかと思います。
私の母も介護施設でお世話になっています。
母と離れて暮らしているからと、最初は納得していましたが、仮に同じ土地で暮らしていても、やはりお世話になっていたなと最近悟りました。
しかも、費用は父が母に残したものからまかなっていますから、何ともふがいないばかりの息子と言えます。
2012年4月18日