すごいMRさん。
製薬会社から、病院へ派遣されてくる人を、昔はプロパーと呼び、今はMRと呼んでいます。
医者になって25年位になりますが、すごいと思った製薬会社の人が4人います。
1人目は医者になって2年目に会った方です。
医局の宴会の幹事に当てられた時のことです。
何をしていいか分からず上司に相談すると、
「あの人に頼め。」
と指名された人が、当時ベストセラーとなった抗生剤の製薬会社の人でした。
私が宴会の日時を言っただけで、5分で二次会の会場まで準備してくれました。
2人目は、今のクリニックに来る前にいた大学病院のMRの人です。
朝6時頃から夜9時頃まで病院に詰めて、痒いところに手の届く気の使いようで製品を売りまくり、瞬く間に本社勤務になりました。
3人目は、新薬の開発会議で、1000人位の大学の医者を相手に、30分くらいで分厚い資料の内容を簡潔に説明してのけた人です。
さすが日本一の製薬会社には人がいるものだと感心しました。
そして4人目は今うちのクリニックを担当しているMRさんです。
この人は2人目のMRさんの、ライバル製品を担当しています。
私は2人目のMRさんの会社の製品が好きで採用していましたが、4人目のMRさんは、短期間で自社の製品に鞍替えさせました。
しかも、このMRさんは私に一度も自社の製品を採用して欲しいと言ったことがないのです。
驚くことに、このMRさんの担当する、うち以外の病院も揃ってこの会社の製品に鞍替えしました。
あたかもオセロゲームの様です。
どうしてそうなったか詳しいことは書く余白がありませんが、私がすごいと思った人は共通して人間観察が鋭く、相手がどう感じ、何を望んでいるかを素早く正確に見抜くことが出来る人たちでした。
おそらく私には全く備わっていない資質であり、もし、私がMRだったら、
他社に乗り換えられてから大慌てで毎日のように押しかけて、うざったく製品の採用をせがむ芸のないMRとなっていたと思います。