昔の食
院長のひとりごと169
今がいいか、昔の方がいいか、は色々と意見の分かれるところでしょうが、食べ物に関しては私は昔の方が遙かによかったと思います。
子供の頃、金沢で食べたものは、今では金沢でも食べられなくなってしまいました。
何より残念なのはズイキの芋です。
ズイキが伸び始める頃だけに取れるもので、味は里芋に似ています。
食感は里芋より遙かにみずみずしく柔らかでした。
これは金沢でも扱っている店が1軒しか無くて、私が大学生の頃にはもう食べられなくなりました。
それから子持ちのオオバイワシです。
今でも大ぶりの鰯はありますが、子供の頃食べた子持ちのあの味が忘れられません。
鰯の卵は本当になめらかで、なんともいえない味わいでした。
私は湯がいてショウガ醤油で食べるの大好きでした。
夏に食べた朝取れのトマトの味も忘れられません。
夏休みに叔母の家に泊まりに行き、畑で朝取れたトマトを朝食で食べるのですが、本当においしかったです。
サンマも昔ほど脂ののったサンマは最近食べれなくなりました。
父の友人がやっていた、名古屋コーチンを扱う鳥料理の店の鶏モモの素揚げの味も、忘れられません。
もう閉店して久しいですが、あれよりおいしい鳥料理には未だに出会えていません。
確かに記憶の中でどんどん変化していっている面もあるでしょうが、もしあの頃の味に今出会えたら、あの頃以上に感激すると思います。
マグロや鰻など、近い将来食べられなくなるのではないかと言われている食材も少なくありません。
食べ物に関してはどんどん悪くなる一方のような気がします。
最近は真空調理とか、スモークを使うとか、熟成とか、昔は無かった様々な技巧が導入されて大変おいしい料理ができるようになってきて、この進化はますます進むと期待できます。
しかし、食材に関しては全く期待できない気がします。
AIによる様々な生活様式の変革が起こり、大変便利な時代が近い将来来るでしょうが、私には不便でもそれぞれの食材が旬にしか食べられず、保存期間が短いので、取れたてを食べていた昭和の食事がとても懐かしい限りです。