病気のこと

脊髄小脳変性症

脊髄小脳変性症

身体の動きのバランスを司るのが小脳です。
小脳の働きが悪くなると、具体的には酔っぱらった時のようになります。
つまり、言葉の呂律がまわらない、歩くときふらつき、足を広げて歩く、ものをつかみにくい、つかもうとすると手が振るえる等です。
書字も困難となります。

小脳と同時に脊髄の上部の障害も伴うと、さらに、パーキンソン症状や起立性低血圧等の自律神経障害が加わります。
この病気も原因が分かっていませんが、遺伝性に発症するものがあり、そのような家系の研究から、遺伝子異常が見つかっています。

パーキンソン病やアルツハイマー病にも家族性に発症するものがあり、これらの家系の研究からも遺伝子異常が見つかってきました。
脊髄小脳変性症は遺伝性の有無に関係なく、症状が徐々に進行します。
残念ながら決定的な治療薬はまだありません。

この病気の中に脳内のTRHというホルモンが効くものが報告され、現在治療薬としてこのホルモンの注射や内服薬が使われています。

また、パーキンソン症状にはパーキンソン病の治療薬が有効です。
この病気もやはり身体を動かすことで、進行を遅らせることが期待できますが、ふらつきが強い病気だけになかなか患者さんには運動は辛いものとなります。
この病気は神経疾患のなかでも最も治療が困難なものであり、様々な薬剤を試みますが、症状の進行を遅らせることすらままならないことも珍しくありません。

遺伝子解析を始め、最も研究が進められている病気ですから、近い将来この病気の治療法や予防に関する発見があるものと期待されます。
現状ではリハビリと薬物を根気よく続けていくことになります。
また、アルコールの多飲は非可逆的に小脳機能を障害する恐れがありますから、くれぐれもお気をつけ下さい。

CTやMRIといった検査のより小脳萎縮は容易に診断がつきます。
確かに有効な治療法もなく、進行していく病気ですが、早期に診断がなされて対応が早ければ症状の進行にも対応I´兌していき易いのではないでしょうか。
治療法の無い疾患を多く扱う神経内科医として痛切に感じる次第です。