病気のこと

神経異常

アルコールによる神経異常

栄養のバランスが悪いと神経障害をきたします。
その一番の原因がアルコールです。
一度に大量のアルコールを飲む事による危険はよくご存じのことと思います。
私にも多々思い当たることがあります。
アルコールの多飲を続けると脳に障害を起こしてくる場合があります。
アルコールが切れると禁断症状として、手のふるえ、幻覚、興奮などの精神症状が現れます。
また、体のバランスを取る働きをする小脳の萎縮が起こり、歩行障害や細かい作業が困難になります。
アルコールを多飲する人には食事をあまり取らずアルコールばかりを飲む人があります。
この様な飲み方をするとビタミンB1欠乏を起こして重篤な精神障害を起こしてきます。
その代表的なものがウェルニッケ症候群とコルサコフ症候群です。
ウェルニッケ症候群は物が二重に見える、歩行がふらつく、知能障害を主症状とするものです。
コルサコフ症候群では物忘れ、時間、場所、人が分からない、作り話をするといった症状が見られます。
いずれもアルコールによる神経障害に加えビタミンB1欠乏により大脳の障害を起こしたことが原因です。
痴呆に似た症状といえます。
早期に診断がつけばビタミンB1の大量注射により症状の改善がみられます。
このほか手足のしびれ、痛み等を生ずる多発性神経炎や視力低下を起こす視神経炎もアルコールの多飲によるビタミンB1欠乏で起こります。
かつて日本が貧しかった頃は十分な栄養がとれずビタミン欠乏により脚気等の病気がみられましたが、最近は過食、飽食のため、より深刻なビタミン欠乏による障害がみられると言うことは皮肉なことです。
アルコールを体内で分解する酵素の働きは個人差があります。
従って適量というのは一概には決めがたく、自分で決めていかなければなりません。
とはいえ、アルコールには神経を鎮静化したり、食欲を増進させたりする効果もあり、少量では有益な食品といえます。反面、神経に対して毒性を持っていることも確かであり、胃粘膜に対する障害作用もあります。
アルコールに限らず毒と薬は紙一重の関係にあります。
有効な利用により生活を豊かにするか、過剰に摂取して生活を荒廃させるかは個人の問題で医療の範疇を越えているとも言えます。

アルコールが嫌いでない私としては、患者さんに禁酒を指示しがたく、上手につきあって貰いたいと切望します。