病気のこと

真打ち登場

アルツハイマー病新薬

真打ち登場

院長のひとりごと204

最近のニュースで私が一番興奮したのは、アルツハイマー病の新薬が開発されたニュースです。
私は医師になり、大学院で研究生活を始めた時に教授から与えられたテーマがアルツハイマー病でした。
私が大学院に席を置いた1980年代に、アルツハイマー病に関する大きな発見がありました。
それはアルツハイマー病の脳で記憶に関連する化学物質が減少しているというものでした。
私の学位論文はアルツハイマー病患者の、脳のこの化学物質の変化に関するものでした。
私は学位を取得後さらに研究生活を続けたくて基礎医学講座に席を移しましたが、そこでの研究はアルツハイマー病に直結するテーマではなく、以後アルツハイマー病の研究に関しては傍観者でした。
でも最新の知見には触れるようにしていました。
1980年代のこの発見が具体的なアルツハイマー病の治療薬として実を結ぶには20年以上かかりました。
その薬が発売となった時の私の感想は「今頃!!」というものでした。
というのも発売された頃はもうアルツハイマー病は、脳内に異常タンパクが蓄積することが原因だということがほぼ確実となっており、治療に関する研究の方向も、いかにこの蓄積した異常タンパクに対処するかに焦点が当てられていました。
私が島根大学を去る頃に、動物実験で脳内に蓄積した異常タンパク質に対する抗体を投与すると異常タンパク質が消失し認知症の症状が改善するという研究が報告されました。
私はこの論文に大変興奮した記憶があります。
早々にアメリカでアルツハイマー病患者の脳に、この抗体を投与する治療が行われましたが致死的な副作用を起こすという不幸な結果となり、以後この研究が下火になった感がありました。
しかし今この異常タンパクを消す薬がアルツハイマー病の新薬として発売されるニュースに触れ「ついに真打ち登場!!」と興奮しました。
この薬の開発に関与した日本に医薬品メーカーは、世界初のアルツハイマー病治療薬を発売した会社です。
「この薬の治療成績やいかに!」
来年の学会が今から楽しみでわくわくしています。