神経性食欲不振症
「やせ」は医学的には標準体重を20%以上下回った場合に病的とみなします。
標準体重の計算方法は色々ありますが、簡単な方法として身長-100に0.9をかけることで求められます。
明らかな臓器の異常がないにも関わらず著しいやせを引き起こす病気に神経性食欲不振症があります。
これは今の「やせている=美しい」という風潮が生み出した病気といえます。
患者さんは外観に強い関心を持つ人たち、すなわち思春期の女性が圧倒的に多く9割以上を占めます。
やせようとして食事をとるのを控え、無謀なダイエットを始める場合が多く見られます。
また、時に反動で過食となることがありますが、食べた後は自分で吐くことが多く、吐くために口の中に指をつっこむことで指に「吐きダコ」ができます。
代謝が低下するので体温、血圧が低くなります。
背中にうぶげが生えることも多く見られます。
乳房や陰毛などの二次性徴は保たれますが、月経は無くなります。
これは、自己防御反応として出血等の体力を消耗する月経を体が抑えるために起こると考えられます。
血液検査では貧血、低蛋白血症、肝機能障害、高コレステロール血症等が認められます。
さらに、性腺機能低下等のホルモンの異常も出現します。
治療としては、薬物として抗うつ薬を用いることがあります。
極端に栄養状態が悪い場合は、静脈から高カロリー輸液を行う場合もあります。
これらの薬物療法とならんで重要なのが心理療法です。
現在最も有効とされているのは行動療法と呼ばれるものです。
これは、入院治療により体重の増加が認められた場合はご褒美として外出や外泊を許可する治療法です。
これにより、増加した体重を本人が受け入れるようにすることが目的です。
さらに、カウンセリング等により、体重に対する誤った認識を是正していくことが重要となってきます。
しかしながら、患者さんの大半を占める若い女性に対して医療機関の人間のメッセージはそれほど心に響くものではないのが現状です。
現代の若い世代に対して最もインパクトの強いメッセージはマスコミから発信されます。
ですから、マスコミがやせ至上主義を煽ることなく、思春期の人たちの健全な発育を促す様に心がけてもらうことを切に祈ります。
余談ですが、私は、常々、みのもんたさんの様な話術を医師も身につければどんなにいいかと思っています。