【 体重管理 】
透析患者さんは腎臓から水分がうまく排泄されなくなるので、体内に余分な水分が残留し体重増加を来すことになります。
過剰な体内の水分貯留は、浮腫ができたり肺に水が貯まったりする原因になります。
このような水分貯留を避けるために、ドライウェイトと呼ばれる適正体重を設定し、体重増加が過剰にならないように、自己管理を患者さんにしてもらいます。
【 ドライウェイト設定の指標 】
適正なドライウェイトを設定することはかなり難しく、いろいろな指標を利用してそれぞれの透析施設で検討されています。
私たちの施設では、胸部レントゲン写真による心胸比測定、エコー検査による下大静脈径測定、細胞外水分量測定、HANP(心不全の指標となるホルモン)測定などの指標を利用しています。
いろいろな指標が、必ずしもドライウェイト設定に同じ向きを示すとは限りません。
ある指標はドライウェイトの増加を、ある指標は減少を示唆することがあります。
そのような場合は当院では、最終的な決定は透析中の血圧変動が無いことを目標に行います。
【 血圧管理 】
高血圧の治療
透析患者さんでは血圧の管理が必要な場合が多いです。
高血圧に関しては一般の場合と同様な方法で血圧管理をします。
1. 塩分制限
これは最も重要な血圧管理の方法です。
薄味の食事を心がけることで、喉の渇きが軽減され飲水量が減らせます。
結果として体重増加を抑えることができ、血圧管理も容易になります。
さらにはご飯の量を減らすことができるので、糖尿病のある患者さんではカロリーコントロールにも役立ちます。
塩分制限は食事管理で最も重要であるといえます。
食品に含まれる塩分を把握しておくことは重要です。
2. 降圧剤
降圧剤をうまく使って血圧をコントロールすることも多いです。
種々の降圧剤が開発されています。
主な降圧剤は以下のようなものです。
高頻度で使用するのは、アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)およびCaチャンネルブロッカーです。
最近ではこの2剤の合剤がありますので、合剤を使用することも多いです。
・ARB
血圧上昇ホルモン(アンギオテンシン)の作用を抑える
・Caチャンネルブロッカー
血管の平滑筋を緩めて血管を広げる
・α・βブロッカー
血管を収縮させる交感神経を血管で抑える
・中枢性交感神経遮断剤
血管を収縮させる交感神経を中枢で抑える
・アルドステロンブロッカー
血圧上昇作用のあるホルモン(アルドステロン)の作用を抑える。
3.ドライウェイトの調節
血圧が高い患者さんで、ドライウェイトの設定が高く、体内の水分(主に循環血液量)が多いことが原因である場合は、ドライウェイトを下げて血液量を減らすことで血圧を下げます。
当院では、血圧を測定して上の血圧(収縮期血圧)が高い場合は、循環血液量が多いことが考えられるので、ドライウェイトを下げることを検討します。
一方下の血圧(拡張期血圧)が高い場合は、末梢血管抵抗が高いことが考えられるので、血管抵抗を下げるために血管拡張作用のある降圧剤を投与することを検討します。
【 低血圧の治療 】
透析前から血圧が低い患者さんもおられますが、多いのは透析中に血圧が低い患者さんと透析後に血圧が下がる患者さんです。
対策は下記の通りです。
1. 昇圧剤を投与する
透析中に血圧の下がる患者さんでは、透析前にあらかじめ服用してもらう場合があります。
透析中の急な血圧低下や透析後の血圧低下に関しては、頓用で昇圧剤を服用してもらいます。
2. ドライウェイトの調節
透析中に必ず血圧が低下する場合は、透析による除水量が多すぎることも考えられるので、ドライウェイトを上げて血液量を増やすようにします。
3. その他の昇圧処置
透析中の血圧低下に対しては、昇圧剤を投与する前に食塩水や50%ブドウ糖液を投与して血圧を上げることが多いです。
また、下肢を挙上したり、I-HDFを行うことで血圧が維持できることがあります。
【 血圧変動への対処法 】
血圧が高くなったり低くなったりする場合、下記の図のようないくつかの原因が考えられます。
まずは原因を調べることが重要です。
原因が特定できればそれぞれの原因に対し、対策を立てます。
具体的には下記のようなことを検討します。
・ドライウェイトの見直し
・投薬の見直し
・透析開始前の血圧のチェック